動物リズム

2014.6.4

 

「はじめにリズムありき」

 

ベルリン・フィルの初代指揮者、ハンス・フォン・ビューローの名言です。

 

音楽を形作るもの「リズム」「メロデイー」「ハーモニー」「テンポ」「ダイナミクス(強弱)」の中で、最も人間の根源に近いものは「リズム」だと私は考えています。

 

生命が誕生した瞬間から、2分割、4分割、8分割・・・と細胞分裂し、やがて心臓が鼓動を打ち始める。

それが命のリズムです。

誕生から死の瞬間まで、この世のあらゆるものはリズムを刻み続けます。

一秒、一日、春夏秋冬、雨、せせらぎ、言葉・・・

この世界は、リズムで溢れています。

 

「私はリズム感がないから」という言葉をよく聞きますね。

でも、ちゃんと生きているんだからリズム感がないはずはありません。

それぞれの人のリズム感覚は違うのです。

 

ゆったりした感覚の人、せかせかした感覚の人・・・歩いたり話したりするのを観察すると大体わかります。

みんな違っていて当たり前なんです。

 

しかし音楽においては、その音楽にふさわしいテンポのリズムで演奏することが求められます。

ゆったりした人はリズムの波に乗れないし、せかせかした人はどんどん速くなるし、なかなか難しいですよね。

 

そこでリトミックの創始者「エミール・ジャック=ダルクローズ」は、体を動かしてリズムを感じる教育法を思いつきました。好きな音楽が聞こえると、自然に身体が動きますよね。あれを利用したんです。

 

小さい生徒には動物のイメージと鳴き声を使ってリズムを指導します。

8分音符はねずみの「ちゅちゅ」、4分音符は犬の「わん」というように、音価が長くなればより大きな動物をイメージさせます。

鳴き声をいいながら体を動かしたり、手や楽器を叩いたりします。大きな動物になるほど、大きく動いて音の長さと空間の大きさの認識を一致させます。

 

ステップするときには、その動物の重さや体の大きさをイメージしながら動きます。

ただ単に、「タカ」「タン」「ター」をやるのとはリズムの感じ方が全然違いますよね。

だって動物は生きてリズムを動いています。そして子どもはその動物になりきって、一緒にリズムを動いています。

 

どの音楽も同じ動物のイメージで聞こえるようになるんじゃないか、と心配したこともありましたが、そうはならないようです。音楽を聴くと同じ8分音符でも「小鳥みたいだね」、「新幹線が来た」などと自由にイメージしています。あくまでこの動物リズムは、リズム練習の時だけという認識のようです。

 

この練習はとても大切なので、ピアノのレッスンでもリトミックでも両方やっています。

でもまずは、「あなたが本来持つリズム」を感じる。

 

それが一番大切なことだと思っています。